子どもの病気・症状

小児の夜尿症

夜尿症とは

5歳を過ぎても夜間の排尿(おねしょ)が続いている状態を指します。小学生の約10人に1人に見られます。発達の一過程として起こるものであり、決して恥ずかしいことではありません。

主な原因

夜尿症が起こる背景には次のような要因があります。多くの場合、これらが組み合わさって夜間の排尿が起こっています。

 

  • 夜間の尿量が多い(抗利尿ホルモンの分泌が少なく、夜に作られる尿の量が多くなる)
  • 膀胱の容量が小さい(膀胱自体が小さく、一度にためられる尿の量が少ない)
  • 睡眠が深くて起きにくい(膀胱からの「おしっこしたい」というサインで目が覚めにくい)

日常生活でのポイント

生活習慣の工夫でおねしょが改善することもあります。以下の点に注意してみましょう。

 

  • 夕方以降の水分を控えめにする(就寝前の過度な水分摂取を避ける)
  • 寝る前に必ずトイレに行く(就寝前の排尿を習慣づける)
  • 便秘を解消する(腸に便が溜まっていると膀胱を圧迫し、おねしょの原因のひとつになるため、便秘の治療が夜尿の改善につながるとされています)
  • 叱らずプレッシャーをかけない(おねしょは本人の意思で防げるものではありません。失敗しても決して叱ったり他の子と比べたりせず、安心できる声かけを心がけましょう)

治療について

生活習慣の改善を行っても夜尿が続く場合、お子さんの状況や年齢に応じて次のような治療法を検討します。

 

  • 薬物療法:夜間の尿量を減らす薬(デスモプレシン酢酸塩〈商品名:ミニリンメルト®〉など)を就寝前に服用し、一時的におねしょの頻度を減らします。この治療は夜尿そのものを根本的に「治す」ものではなく、夜間の排尿回数を減らしたり生活への影響を軽減することが目的です。また、宿泊行事や旅行など「おねしょが困るイベント時の対策」としても活用されます。
  • アラーム療法:おねしょをした際に下着やシーツに仕込んだセンサーが尿に反応し、音や振動で子どもを起こす装置を用いる治療法です。夜中に尿意を感じたときに自分で気付いて起きられるようトレーニングするもので、夜尿症治療の有効な方法の一つです。

 

いずれの治療を行う場合も、お子さんの年齢や性格に合わせて無理のない方法を選ぶことが大切です。医師と相談しながら、ご家族と一緒に取り組んでいきましょう。

最後に

夜尿症は成長とともに自然に治ることも多く、焦りは禁物です。ご家族の温かいサポートが何よりの治療になります。一緒に前向きに取り組み、少しずつ改善を目指しましょう。不安なことがあれば遠慮なくご相談ください。

アラーム療法

アラーム療法は夜尿症の代表的な治療法の一つです。おねしょ時にアラームが鳴って子どもを起こすことで、尿が出る前に自分で気付いて起きる力を育てることを目的としています。実際には、おねしょでシーツや下着が湿るとセンサーが反応し、音や振動で子どもを目覚めさせます。これを繰り返すことで「尿意のサインに脳が反応して起きる」訓練となり、徐々に夜間に自力で起きてトイレに行けるよう促します。

アラーム療法は根気がいりますが、成功すると長期的な効果が期待できる治療法です。お子さんやご家族が負担なく取り組めるタイミングで開始し、医療者と経過を確認しながら進めていきます。

夜尿症の薬物療法

薬による治療(薬物療法)は、おねしょの頻度を一時的に減らしたり、夜尿による生活上の負担を軽くすることが目的です。根本的な治癒というより、「おねしょと上手につきあう」ためのサポートと考えてください。特に、以下のようなケースで薬物療法を検討します。

 

  • 5~6歳を過ぎても週に2回以上の頻度で夜尿がある場合(年齢相応の対策をとっても頻回に続く)
  • 生活指導やトレーニングだけでは改善しない場合
  • 間近に宿泊行事や旅行などがあり、短期間での対策が必要な場合
  • 本人や家族が強く治療を希望する場合

 

代表的な薬剤にはデスモプレシン(抗利尿ホルモン製剤)と、抗コリン薬(膀胱の過剰な収縮を抑える薬)があります。デスモプレシンは夜間の尿量が多いタイプの夜尿症(夜間多尿型)に有効で、即効性があり使用初日からおねしょが減ることもあります。ただし服用中は夜間の過剰な水分摂取を控える(水分制限)必要があります。抗コリン薬は日中の頻尿や尿意切迫感(我慢できず漏れてしまう)があるタイプの夜尿症に用い、膀胱の容量を高めることで効果を発揮します。副作用として口の渇きや便秘が現れることもあります。

 

薬物療法を行う際は、定期的に効果を評価しながら必要に応じて中止や再開を判断します。「薬=癖になるのでは?」と心配されるかもしれませんが、夜尿症の薬は一時的に排尿リズムをサポートするもので、適切に使えば習慣性はありません。自己判断で急に中止せず、必ず医師と相談のうえで少しずつ調整していきましょう。

 

主な夜尿症治療薬の特徴をまとめると次の通りです。

まとめ

デスモプレシン酢酸塩 (ミニリンメルト®) ・主な作用
夜間の尿量を減らす

・効果的なケース
夜間多尿型の夜尿症

・特徴、注意点
即効性あり。服用中は夜間の過度な水分摂取を控える必要あり。
プロピベリン塩酸塩 (バップフォー®) ・主な作用
膀胱の過剰収縮を抑え尿をためやすくする

・効果的なケース
昼間にも頻尿や尿失禁があるタイプ(昼間症状を伴う夜尿症)

・特徴、注意点
日中の排尿回数減少にも効果。口渇・便秘など副作用に注意。

※夜尿症のタイプによって薬の効果は異なります。お子さんの状態に合わせ、必要なら上記の薬を組み合わせる場合もあります。薬物療法はあくまでサポートですので、適切なタイミングで定期的に見直し、不要になれば中止することも大切です。

夜尿症で確認する主な尿検査項目

夜尿症自体は多くの場合「発達の一部」であり病気ではありませんが、念のため他の病気が隠れていないか確認する目的で尿検査を行うことがあります。尿検査では以下のような項目を調べ、お子さんの基礎的な健康状態を確認します。

尿比重 尿の濃さ(密度)を示す値。低い場合は夜間の尿が薄く大量に作られている=夜間多尿の可能性があります。
尿タンパク 尿中にタンパクが出ていないかを確認。タンパク尿がある場合、腎臓の病気(ネフローゼ症候群など)の可能性があります。
尿糖 尿中に糖が出ていないかを確認。糖が出ている場合、小児糖尿病などによる多尿の可能性を疑います。
尿潜血 尿に血液成分(赤血球)が混じっていないか確認。血尿がある場合、腎炎や尿路系の異常がないかチェックします。
尿pH 尿の酸性・アルカリ性の程度を測定。異常な値の場合、代謝異常や尿路感染症の有無を調べる手がかりになります。

•検査の目的

これらの尿検査により、夜尿症以外の原因(腎臓の疾患、糖尿病、尿路感染症など)がないか除外することができます。また、尿比重の結果は夜尿症のタイプ(夜間多尿型かどうか)の判断材料にもなります。さらに治療開始前に腎臓の機能や体の状態を把握することで、薬を安全に使えるかどうかの確認にも役立ちます。

排尿記録(排尿日誌)

ご自宅で排尿記録(おしっこ日誌)をつけていただくと、夜尿症のタイプ把握に非常に有用です。毎朝起床時の最初の尿量、日中の排尿時刻や回数、夜尿の時間帯などを記録することで、「夜間に尿が多く出ているのか」「膀胱にためられる量が小さいのか」などを分析できます。その結果、夜尿症が「夜間多尿型」「膀胱容量低下型」または「混合型」なのか判断しやすくなり、最適な治療方針の選択に役立ちます。