子どもの病気・症状

小児の慢性便秘

慢性便秘とは

子どもの慢性便秘症は、「排便の回数が極端に少ない(週2回以下)または排便があっても毎回とても出しにくく苦痛を伴う状態」が1か月以上続く場合に診断されます(年齢によって正常な排便頻度は異なりますが、たとえ毎日排便があっても排便時に強い痛みや困難があれば便秘と捉えて対応します)。

なぜ便秘になるの?(原因)

小児の便秘の多くは機能性便秘(腸や肛門に器質的な病変がない便秘)です。原因として次のような生活習慣・要因が関与します。

 

  • 排便を我慢する習慣(以前に排便が痛かった経験からトイレを我慢するようになる など)
  • 食物繊維や水分の不足(野菜・果物・穀類など繊維の少ない食事、飲水量が少ない)
  • 運動不足(身体を動かす機会が少ないと腸の動きも鈍くなる)
  • 不規則なトイレ習慣(朝忙しくて排便の時間がない、学校や外出先で排便を我慢してしまう など)
  • 心理的ストレスや生活環境の変化(入園・入学や引っ越しなど環境変化、トイレへの不安 など)

日常生活でのポイント

便秘は生活習慣と深く関わっており、毎日の積み重ねが改善のカギです。次の点を心がけましょう。

 

  • 食事:食物繊維を意識して摂る(野菜、果物、全粒穀物などをバランスよく)
  • 水分:十分な水分補給(特に朝起きてからと日中こまめに水やお茶を飲む)
  • 習慣づくり:朝食後など腸が動きやすいタイミングでトイレに座る時間を設け、毎日決まった時間に排便を試みる
  • 運動:年齢に応じた適度な運動遊びをする(体を動かすことで腸の蠕動運動も活発になる)
  • 環境・声かけ:排便を我慢しなくて済む雰囲気づくり(トイレを怖がらせないようにし、失敗しても叱らず、リラックスして排便できるよう促す)

治療について

生活指導に加えて便秘の程度に応じ、以下のような治療を組み合わせます。目標は「スムーズに痛みなく排便できる状態を安定して続ける」ことです。

 

  1. 下剤による排便補助(便をやわらかくする薬) – ポリエチレングリコール(モビコール®)やラクツロース(モニラックシロップ®)、酸化マグネシウムなどの便をやわらかくするお薬を使って、便をやわらかくし排泄しやすくします(主に慢性期の基本治療)。
  2. 浣腸・坐薬による排便誘導 – 便がかなり溜まっている場合の最初の処置として、グリセリン浣腸やテレミンソフト®坐薬で直腸を刺激し、溜まった便を出すこともあります。
  3. 維持療法(長期的なケア) – 便が毎日出るようになっても、すぐに薬を中止せずに最低でも数か月は下剤の内服を続けます。腸の動きや排便習慣が整うまで継続することで、再度便が溜まるのを防ぎます。

 

※「下剤を使うと癖になるのでは」と心配される方もいますが、適切に使用すれば薬は腸を良いリズムに戻すための一時的なサポートであり、習慣性はありません。医師の指示のもと、徐々に減量・中止していきます。自己判断で急にやめたりせず、必ず医師と相談しながら調整してください。

最後に

便秘は子どもによくある悩みですが、正しい理解と根気強い対応で必ず改善できます。お子さんが「出た!気持ちいい!」という成功体験を積み重ね、自信につながるようサポートしてあげましょう。ご家庭だけで抱え込まず、心配なことがあればいつでも医療機関にご相談ください。

小児の慢性便秘に使われる主な薬

慢性便秘の治療に用いる主なお薬には、いくつかのタイプがあります。それぞれ目的や作用が異なりますので、お子さんの状態に合わせて医師が適切な薬を選択します。

①便をやわらかくする薬(浸透圧性下剤)

腸管内に水分を引き込むことで便を柔らかく保ち、自然な排便を促すタイプの薬です。もっとも基本的で安全性が高く、長期の使用にも向いています。代表例として以下があります。

  • ポリエチレングリコール製剤(モビコール®など) :腸管内に水分を保持し便を軟らかくする粉薬です。長期使用しても安全性が高いことが特徴です。便の硬さをコントロールしやすいため、小児便秘の第一選択薬として広く使われています。
  • 酸化マグネシウム(マグミット®など) :腸の中に水分を集めて便を柔らかく保つ作用があります。長期間の使用が可能で、習慣性もなく作用は穏やかです。ただし、まれに高マグネシウム血症を起こす恐れがあるため、特に腎機能の弱い場合には注意します。
  • ラクツロース(モニラック®など) :糖類を利用したシロップ状の下剤で、便に水分を与えて柔らかくし排出を促します。甘く飲みやすいため乳幼児にも使いやすいです。副作用としてお腹の張りやガスが出やすくなることがあります。

②腸の動きを助ける薬(刺激性下剤)

大腸の蠕動運動(便を先へ送り出す動き)を刺激し、排便を促すタイプの薬です。頑固な便秘や排便がしばらく止まっているときに短期的に使用します。

  • ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン®など) :就寝前に服用すると翌朝までに大腸を刺激し排便を促します。液体の薬で量を調節しやすい利点があります。ただし長期間連用すると効果が薄れ(腸が刺激に慣れて)しまう可能性があるため注意が必要です。

③直腸に作用する薬(坐薬・浣腸)

溜まった便をすぐに出したいときや、排便のリズム付けをしたいときに用います。

  • グリセリン浣腸、ビサコジル坐薬(テレミンソフト®坐薬):肛門から挿入し直腸を直接刺激して排便を誘導します。即効性があり、「便意の感覚」をつかませる練習にも使われます。
  • 浣腸や坐薬を頻繁に使いすぎると本来の便意反射が鈍る恐れがあるため、連用は避けます。

薬物療法のポイント

これらの薬はあくまで「腸を良いリズムに戻す手助け」であり、適切に使用すれば習慣性はありません。目標は「痛みなく毎日気持ちよく出せる状態を維持すること」であり、便秘が解消してもすぐに薬を中止せず最低数か月は維持療法を続けることが重要です。保護者の判断で勝手に減量・中止せず、必ず医師と相談しながら少しずつ調整していきましょう。