赤ちゃんの○○外来

赤ちゃんの 耳 外来

赤ちゃんの耳について、心配なことはありませんか?

「呼んでも振り向かない気がする」「耳から少し臭いがする」——初めての育児では、赤ちゃんのささいな様子が気になるものです。とくに言葉で伝えられない時期は、比べる相手もいないため、「気のせいかも」と思いながらも、どこに相談すればよいのか迷ってしまうことが多いのではないでしょうか。

私は当院で小児科外来を担当している小児科医です。日々たくさんの赤ちゃんと保護者の方にお会いしていますが、耳に関するご相談はとても多く、そのほとんどの方が「こんなことで受診していいのかな」と迷ってから来院されます。先にお伝えすると、迷ったときこそ受診してください。赤ちゃんの耳のトラブルは、早めに確認するほど対応がシンプルで済むことが多いからです。

 

当院は、耳鼻咽喉科と小児科が一つのクリニックとして診療している医療機関です。同じ院内で、耳の専門家である耳鼻咽喉科専門医と小児科医が、その場で一緒にお子さまを診ることができます。小児科医が必要かなと思ったら、すぐに耳鼻咽喉科専門医に診てもらうことができます——一度の受診で両方の目が入るのが、当院の「赤ちゃんの耳外来」の特徴です。

新生児・乳児の耳でよくあるご心配

赤ちゃんは「耳が痛い」と言葉で訴えることができません。そのため耳トラブルのサインは、泣き方・機嫌・哺乳(ミルクや母乳の飲み方)・寝つきなどに表れやすいのが特徴です。保護者の方が気づきやすいサインを、代表例として整理します。

 

1)音への反応・聞こえが気になる


▼ 呼びかけてもあまり振り向かない

▼ 物音への反応が弱いように見える

▼ 突然の大きな音にも驚かないことがある

▼ 新生児聴覚スクリーニングで「要再検査(リファー)」と言われた

 

音への反応には個人差もありますが、気になる場面が多い、以前と比べて反応が変わってきた、という場合は一度ご相談ください。

また、出産した産科で受ける新生児聴覚スクリーニング(生まれてすぐに行う聞こえの簡易検査)で「要再検査(リファー)」となった場合、それは「難聴が確定した」という意味ではありません。羊水や耳あかの影響で一時的にそう判定されることもあります。ただし、そのままにせず必ず次の検査へ進むことが大切です。当院ではリファー後のご相談をお受けし、精密検査(ABR=音に対する脳の反応を調べる検査など)が必要な場合には、高次医療機関(より専門的な検査ができる病院)へご紹介します。

 

2)耳だれ・臭い・かさぶたがある


▼ 耳の中から液体が出る

▼ 耳から臭いがする

▼ かさぶたが繰り返しできる

▼ 耳の前にある小さな穴から、白いものや臭いが出る・赤く腫れる

▼ 耳のつけ根の皮膚が切れてジュクジュクしている(いわゆる「耳切れ」)


耳だれがある場合、外耳炎(耳の入口周辺の炎症)や中耳炎(鼓膜の奥の炎症)が関係していることがあります。また、生まれつき耳の前に小さな穴(先天性耳瘻孔・せんてんせいじろうこう)がある赤ちゃんは意外と多く、乳児健診で指摘されることもあります。かさぶたや臭いの原因が湿疹などの皮膚トラブルであることも少なくありません。原因によって対応が変わりますので、放置せず早めに確認しましょう。

 

3)耳をよく触る・眠れない

 

▼ 片側ばかり触る、かく

▼ 横になると泣きやすい

▼ 寝つきが悪い、夜中に何度も起きる


痛みや違和感があると、赤ちゃんは言葉ではなく行動で知らせてくれます。中耳炎の痛みは横になると強くなりやすいため、「寝かせると泣く」は大事なサインの一つです。

 

4)熱がある・鼻水や咳が続く


▼ 発熱がある

▼ 鼻水が続く

▼ 咳が長引く

▼ 風邪がなかなか治りきらない


耳と鼻・のどは「耳管(じかん)」という細い管でつながっています。赤ちゃんの耳管は大人より短く水平に近いため、鼻やのどの風邪の菌やウイルスが耳に届きやすく、風邪のあとに中耳炎を起こしやすいという特徴があります。とくにRSウイルスやインフルエンザなどの感染症が流行する時期は、風邪に続く中耳炎が増えます。感染症診療を専門とする小児科医の立場からも、「鼻水が長引く赤ちゃんは、耳も一緒に確認しておく」ことをおすすめしています。

受診の目安——急ぐもの・急がないもの

「とりあえず様子を見よう」と迷うことの多い時期だからこそ、目安を緊急度で分けてお示しします。

 

【今日〜数日中の受診をおすすめします】

  • 発熱があり、機嫌が悪い・いつもよりミルクや母乳を飲まない
  • 耳の前や後ろが赤く腫れている

 

【急ぎではありませんが、一度ご相談ください】

  • 呼びかけへの反応が以前と比べて弱い気がする
  • 新生児聴覚スクリーニングのリファー後、どうすればよいか分からない
  • 耳あかがたまっているようだが、家でどう扱えばよいか分からない
  • 同じ症状を繰り返す(何度も耳を気にする、繰り返し耳だれが出る)
  • 耳の前の小さな穴や、耳の形について健診で指摘された

赤ちゃんは症状を言葉にできないぶん、「少し気になる」段階でご相談いただくのがちょうどよいタイミングです。

赤ちゃんの耳で起こりやすい代表的な状態

耳外来でよくお話しする代表例を、できるだけ分かりやすくご説明します。

 

急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)

風邪のあとなどに、鼓膜の奥(中耳)で炎症が起こる状態です。痛みで泣く・寝つけない・耳を触る・発熱するなどの様子がよく見られます。赤ちゃんは構造上、大人より中耳炎になりやすい年齢です。

 

滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)

鼓膜の奥に液体がたまる状態で、痛みや発熱がほとんどないのが特徴です。そのため気づかれにくいのですが、聞こえに影響することがあり、風邪や急性中耳炎のあとに続いて起こることがあります。「熱もないし痛がらないから大丈夫」とは限らない、というのが大切なポイントです。鼓膜を実際に見ることで確認できます。

 

反復性中耳炎(はんぷくせいちゅうじえん)

風邪をひくたびに中耳炎を繰り返すお子さんがいます。低年齢ほど起こりやすく、保育園などの集団生活が始まる時期や、感染症の流行期に増える傾向があります。繰り返す場合は、鼻の治療やワクチン、生活面も含めて、耳鼻咽喉科と小児科の両方の視点から対策を一緒に考えます。

 

外耳炎(がいじえん)

耳の入口周辺が炎症を起こし、耳だれ・痛み・かゆみが出ることがあります。綿棒を入れすぎるなど、耳の中への刺激がきっかけになる場合もあります。

 

耳あか

耳あかが多くたまると、聞こえ方が変わったように感じられることがあります。ただし、赤ちゃんの耳の穴は小さくデリケートで、自己判断で奥まで掃除するのはおすすめできません。耳あかの除去は保険診療で行える医療行為ですので、遠慮なく当院にお任せください。

 

先天性耳瘻孔(せんてんせいじろうこう)・副耳(ふくじ)

耳の前に生まれつき小さな穴があるものを先天性耳瘻孔、耳の前に小さな皮膚のふくらみがあるものを副耳といいます。どちらも珍しいものではなく、乳児健診で指摘されることがあります。多くは経過観察で問題ありませんが、耳瘻孔は臭いのある分泌物が出たり、感染して赤く腫れたりすることがあり、その際は治療が必要です。手術が望ましい場合には、対応可能な専門機関をご紹介します。

 

耳のまわりの湿疹・耳切れ

乳児期は皮脂や湿疹の影響で、耳のつけ根が切れたり、耳の入口周辺がジュクジュクしたりすることがあります。「耳だれかと思ったら皮膚のトラブルだった」というケースもよくあります。スキンケアの方法も含めてご案内しますので、判断に迷うときはそのままの状態でお見せください。

ワクチンと中耳炎——小児科医からのひとこと

定期接種の肺炎球菌ワクチンとヒブワクチン(現在は「5種混合ワクチン」として接種されています)は、重い中耳炎の主な原因となる細菌をカバーしています。ワクチンの普及により、重症の中耳炎やその合併症は以前より減りました。

予防接種は感染症から赤ちゃんを守ると同時に、耳を守ることにもつながっています。

接種スケジュールのご相談も、当院の小児科でお受けしています。

ご自宅でできること

赤ちゃんの耳で大切なのは、「やりすぎない」ことです。耳は小さく構造も複雑なため、ちょっとした刺激がきっかけで悪化することがあります。耳の中に無理に触れたり頻繁にチェックしたりするよりも、刺激を減らしながら様子を観察することが基本になります。

 

耳トラブルにつながりやすい例としては、綿棒を耳の奥まで入れること、症状のある耳を何度も触ってしまうこと、嫌がっているのに無理に処置をすることが挙げられます。おうちでのケアは、お風呂上がりに耳の入口や耳のうしろをやわらかいガーゼやタオルで軽く拭う程度で十分です。

 

そのうえで、受診の際に役立つ情報を「分かる範囲で」記録しておくと、診療がスムーズになります。たとえば——

 

▼ 耳だれや発熱の有無と、いつから気になり始めたか

▼ 気になるのは片側だけか、左右で違いがあるか

▼ 哺乳量がいつもと比べて落ちていないか、機嫌の変化はあるか

 

スマートフォンで耳の様子を写真に撮っておくのも、症状が受診時に落ち着いている場合の手がかりになります。

耳そうじは、私たちにお任せください

「耳あかを取ってほしいだけなのに、受診していいの?」というご質問をよくいただきますが、もちろん大歓迎です。耳あかの除去だけの受診も、保険診療で対応しています。

ご自宅で無理に取ろうとして耳を傷つけてしまうより、ずっと確実で負担も少ない方法です。あわせて鼓膜の状態も確認できるため、中耳炎などの早期発見にもつながります。

受診の「ついで」で構いません

耳のためだけにわざわざ受診する必要はありません。来院された際に、「ついでに耳も見てもらえますか」とひとこと添えていただければ、その場で確認します。耳鼻咽喉科と小児科が一つのクリニックだからこそできる、当院ならではの受診のしかたです。

よくあるご質問

  1. 綿棒で耳そうじをしてもいいですか?
  2. 耳の入口の見える範囲を軽く拭う程度なら構いませんが、奥に入れるのは避けてください。耳あかを押し込んだり、皮膚を傷つけて外耳炎の原因になったりすることがあります。奥の耳あかは当院で除去します。
  3. テレビの音や物音に反応しているので、聞こえは大丈夫ですよね?
  4. 一概には言えません。赤ちゃんは音だけでなく、振動や光、まわりの人の動きにも反応するため、「反応している=聞こえている」とは限らないのです。また、片方の耳だけ聞こえにくい場合は日常の様子ではまず気づけません。気になる場合は一度ご相談ください。
  5. お風呂の水が耳に入ってしまいました。中耳炎になりますか?
  6. 基本的に心配いりません。中耳炎は鼻やのど側から起こるもので、お風呂の水が原因になることはまれです。耳の外側を軽く拭くだけで十分で、綿棒で奥の水を取ろうとする必要はありません。
  7. 中耳炎になったら、必ず抗生剤(抗菌薬)が必要ですか?
  8. いいえ、すべての中耳炎に抗菌薬が必要なわけではありません。軽症であれば、痛みを和らげながら経過を見ることもあります。必要なお子さんに、必要な薬を、必要な期間だけ——薬剤耐性菌(薬が効きにくい菌)を増やさないためにも、鼓膜の所見と全身状態をきちんと確認したうえで判断します。

赤ちゃんの耳のことは、当院にご相談ください

赤ちゃんの耳の悩みは、初めての育児であるほど大きく感じられるものです。当院では、耳鼻咽喉科と小児科が一つのクリニックとして、聞こえの心配から耳だれ・中耳炎・耳あか・耳の形のことまで、お子さまの耳を多角的に確認できる体制を整えています。

鼻やのどの症状と耳の関係が疑われる場合も、中耳炎かどうかの判断が必要な場合も、一度の受診で一緒に確認できます。

 

 

当院では、小児科医が必要かなと思ったら、すぐに耳鼻咽喉科専門医に診てもらうことができます。

「どこに相談すればいいのか分からない」「耳のことが気になる日々が続いている」——そんなとき、頼っていただける場所でありたいと考えています。「大げさかな」と思う前に、些細なことでもお気軽にご相談ください。

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