抗IgE抗体療法
オマリズマブ(ゾレア®)の皮下注射
重症スギ花粉症の
アレルギー反応を
根元からブロックする
最新の治療
はじめに
抗IgE抗体療法:
オマリズマブ(ゾレア®)の皮下注射
2020年より、重症・最重症のスギ花粉症に対して、抗IgE抗体治療薬であるオマリズマブ(ゾレア®)を皮下注射する治療を行うことができるようになりました。
花粉症シーズンは、受験シーズンや年度末の大仕事をする期間と重なります。これまで、お薬を使用しても症状がつらかった方などに有効な治療法になる可能性が高いと考えられます。
IgEとは?
スギ花粉が鼻の粘膜に付着すると、花粉が抗原として認識されて、ヒトの免疫防御システムでIgEという物質が作られます。このIgEにスギ花粉がくっつき、ヒトの肥満細胞と結合すると、肥満細胞からヒスタミンなどのアレルギーを引き起こす物質が大量に放出されます。このヒスタミンなどがくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどを引き起こします。アレルギー反応が始まるきっかけに大きく関与するのがIgEです。
抗IgE抗体療法とは?
これまで病院で処方されるお薬の中心が、ヒスタミンを抑える薬(抗ヒスタミン薬)でした。抗IgE抗体療法とはヒスタミンよりも上流(根元)で、IgEがヒトの肥満細胞に結合しないようにブロックする、病気の流れを止めてしまう治療法です。IgEが抗IgE抗体と結合すると肥満細胞に結合しなくなります。そうすることによってヒスタミンなど自体が放出されませんので、アレルギー反応が起きにくくなります。
アレルギーの分野において、抗IgE抗体であるオマリズマブ(薬剤名:ゾレア®)は世界90ヶ国以上で使用され、日本でも2009年から気管支喘息の治療薬として広く使用されて、喘息症状の改善に一翼を担っています。それだけ効果と安全性が認められているということです。
抗ヒスタミン薬とは以下のようなお薬です。
ビラスチン(ビラノア)、デスロラタジン(デザレックス)、ルパタジン(ルパフィン)、オロパタジン、セチリジン、
レボセチリジン、フェキソフェナジン、エピナスチン、ベポタスチン、ロラタジン、エバスチンなど。
治療の対象となる方
下の「1.~5.」をすべて満たす方がゾレア®治療の対象となります。ご不明な点があればお気軽にご質問・ご相談ください。
12歳以上の方。
12歳未満の方は対象外となります。
スギ花粉症の方。
スギ花粉症以外のヒノキだけの方、その他の花粉症の方、ハウスダストやダニなどの方は対象になりません。
昨年のスギ花粉症によるくしゃみ・鼻水・鼻づまり症状が重症・最重症の方。
くしゃみ発作の回数が1日11回以上であったり、鼻水をかむ回数が1日11回以上であったり、一日中鼻づまりがひどい方は、重症や最重症の可能性があります。下のページでご自身の症状の重症度をチェックしてみてください。
研究によると、スギ花粉症で重症・最重症の方は約50%いらっしゃいます。
昨年のスギ花粉症に使用した内服薬と点鼻薬が確認できる方。
当院以外で処方された方は、昨年の処方を覚えておくか、昨年の処方がわかるお薬手帳などを持参してください。
今年のスギ花粉症によるくしゃみ・鼻水・鼻づまり症状が重症・最重症で、内服薬と点鼻薬を1週間使用しても症状が改善しない方。
研究によると、重症・最重症の方が内服と点鼻で改善しない方は約20%いらっしゃいます。
【ご注意】
体重が重い方、血液検査で総IgE濃度が高い方や、スギ特異的IgE抗体値が低い方は、抗IgE抗体療法を受けることができない可能性があります。血液検査を行わないと分かりませんので、まずは受診をお願いします。
治療について
治療期間
当院では基本的に2月から4月に行いますが、患者様の居住地域や症状により(スギの山の近くにお住まいの方や、少しのスギ花粉でも敏感に症状が出る方などは)1月や5月も行うことがあります。
治療方法
血液中の総IgE値および体重をもとにゾレア®の投与量が決定され、2週間もしくは4週間おきに、1回あたり1~4本の注射薬剤を皮下注射する治療となります。
- ・3か月間で3回もしくは6回程度の受診が必要です。
- ・血液中の総IgE値と体重によって注射する量が変わります。
治療費
治療費は注射薬剤費のみで1か月あたり、3割負担で約4,500円から70,000円の間です。投与量によって金額が変わります。その他に、受診、検査にかかる費用、同時に服用し続ける必要のある抗ヒスタミン薬の処方料がかかります。
治療費が高額になった場合は、高額療養費制度によって医療費の一部が払い戻される場合があります。
また、医療費控除によって税金が安くなる場合があります。小児は12歳以上が適応ですが自治体によってはこども医療費などの医療費助成が受けられます。
治療費などについて詳しくは下のページをご覧ください。
副作用について
一般的な注射と同じように、副作用のほとんどが注射部位の発赤、腫れ、かゆみなどです。また、多くのお薬にもその可能性があるように、ゾレア®にも稀ではありますがアナフィラキシーを引き起こす可能性がありますので、呼吸困難、立ちくらみ、失神、蕁麻疹、全身のかゆみ、唇・舌・のどの腫れなどの症状が思いあたるようでしたら、速やかに医療機関に連絡してください。初回注射後の数時間は注意が必要です。
スギ花粉症に対する
様々な治療法
スギ花粉症を治療する薬の中心は抗ヒスタミン薬です。その他に、点鼻ステロイド薬、抗ロイコトリエン薬、内服ステロイド薬、鼻粘膜レーザー治療などの手術療法があります。
最近ではスギ花粉エキスによる舌下免疫療法も有効です。3年から5年にかけて毎日スギ花粉エキスが含まれた錠剤を舌の下に含み内服することでスギ花粉症に対する体質改善を行う治療方法です。約2割の人が完解し(症状がほとんど出なくなり)、約6割の人が花粉症の症状が軽くなる治療法です。
もちろん、スギ花粉を吸いこまないような日常生活における取り組みも重要であることを忘れてはいけません。
これらの様々な治療法があることを理解した上で、重症のスギ花粉症の方に対する抗IgE抗体療法を受けてみたいと思われる方はぜひ当院を受診してください。
治療開始までの流れ
抗IgE抗体療法は、投薬を行っても症状が重症・最重症のスギ花粉症の方に限定した治療ですので、治療を開始するまでに確認しないといけないポイントがいくつかあります。
1回目受診時
- ・昨年のスギ花粉症の症状が重症もしくは最重症であったことを確認します。
- ・昨年のスギ花粉症に使用した内服薬と点鼻薬を確認します。
- ・採血を行い、スギ特異的IgE抗体値と総IgE値を測定します。
(以前に血液検査をされたことがある方であっても血液検査が必要となります。)
1週間、抗ヒスタミン薬の内服および点鼻ステロイド薬の噴霧による治療を行います。
抗ヒスタミン薬とは以下のようなお薬です。
ビラスチン(ビラノア)、デスロラタジン(デザレックス)、ルパタジン(ルパフィン)、オロパタジン、セチリジン、
レボセチリジン、フェキソフェナジン、エピナスチン、ベポタスチン、ロラタジン、エバスチンなど。
点鼻ステロイド薬とは以下のようなお薬です。
モメタゾン(ナゾネックス)、フルチカゾン(アラミスト)、デキサメタ
ゾン(エリザス)など
2回目受診時
- ・上記の治療を1週間以上行っても効果が低く、スギ花粉症の症状が重症もしくは最重症であることを確認します。
- ・スギ特異的IgE抗体値と総IgE値を確認します。抗IgE抗体療法が可能かどうか、投与量と投与間隔を確認します。
- ・抗IgE抗体療法について再確認を行い、注射費用などを考慮して、この治療法を行うか最終決定します。
3回目受診時
- ・ゾレア®の皮下注射の1回目を行います。
【ご注意】
体重が重い方、血液検査で総IgE濃度が高い方や、スギ特異的IgE抗体値が低い方は、抗IgE抗体療法を受けることができない可能性があります。
毎年スギ花粉症の時期に大変な思いで過ごされる方は1月中に血液検査を行い、注射が可能か、注射本数、費用などを調べておくことによって、スムーズに花粉飛散期を迎えることができます。
当院までのアクセス
医療法人ファーストくさの耳鼻咽喉科・小児科
〒843-0001 佐賀県武雄市朝日町大字甘久1287
(メリーランド武雄内)
- ・JR佐世保線「高橋駅」から徒歩約9分
- ・長崎自動車道「武雄北方」インタ-から車で約2分
メリーランド武雄という複数の商業施設とアミューズメント施設が融合した敷地内(ファッションセンターしまむら様の隣)に位置していますので、診療の合間や診療の前後に周囲の施設で買い物などをすませることができます。
※駐車場は500台ございます。
ゾレア®についてもっと詳しく知りたい方は
下のページも参考にしてください。